当研究室は、水圏科学の分野において、国内外の研究者とさまざまな共同研究を行っています。また省庁の支援による、産官学プロジェクトを活発に推進しており、有機性廃棄物や排水処理プロセスの研究開発を行い、実用化が可能な技術の開発を目指しています。
学外との共同研究の代表的なものは、横浜国立大学大学院環境情報研究院 生物海洋学研究室(菊池知彦教授)との相模湾沿岸における海洋観測です。この共同研究は既に 20 年におよび、横浜国立大学の研究室と共同で、相模湾沿岸生態系に関する多くの成果を挙げてきました。
海外では、マレーシア国立大学(Othman Ross 教授)との共同研究も 15 年を経ており、その間、3度のマレー半島全域のサンゴ礁の保全調査が実施され、両大学の多くの大学院生・学生が調査に参加しました。熱帯の海洋生態学に貢献する新知見も集積し、若手スタッフによる活発な研究活動が展開されています。マレーシアとの共同研究については、日本学術振興会(JSPS)の2国間協力、多国間協力事業の支援によるところが大きく、ここに感謝致します。
インドネシアのスラバヤ工科大との共同研究では、途上国で大きな問題となっている浸出水の研究を行っています。それらの成果は既にいくつかの国際会議で共同発表を行い、高い評価を受けています。中国の重点大学である浙江大学とも本年 MOU が締結され、来年から共同研究をスタートさせる予定です。
以下に最近の研究プロジェクトのいくつかをもう少し詳しく説明します。
SATREPS “地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム”(科学技術振興機構 (JST)、国際協力機構 (JICA))(研究統括:理工学部 佐藤伸二郎 教授)
内容:
近年の人口増加に伴う栄養塩の流入や外来種の移入により、エチオピアのタナ湖で水草(ホテイアオイ)が過剰繁茂し、環境汚染や経済的損失を引き起こしています。EARTH プロジェクトは、日本とエチオピアの6つの研究機関で“ナイルの源流エチオピア・タナ湖で過剰繁茂する水草バイオマスの管理手法と有効利用プロセスの確立”に向けて、水草をリモートセンシング等のICTを駆使して適切に管理・回収し、回収したバイオマスから有価物(バイオガス、メタン発酵消化液、バイオ炭、微細藻類、野菜、作物など)を生産するプロセスを研究開発することで、環境保全と経済成長を両立させる現代版アフリカ里湖(さとうみ)循環型社会の構築を目指します。本研究室では、ホテイアオイ消化液から現地で単離された微細藻類Limnospira fusiformis大量培養を研究開発するテーマ3を担当しています。
詳細についてはこちらを御覧ください。
(滋賀県下水道課、代表機関:滋賀県立大学)
内容:
リン鉱石の国際取引価格はここ十数年で30倍近くに高騰しており、リン資源が存在せずほぼ100%を輸入している日本では喫緊の課題となっています。下水汚泥は多量のリンを含有していますが、地域によっては重金属も含有することがあり、再利用の大きな障壁となっています。そこで、下水汚泥をメタン発酵処理し、エネルギー回収に加えて無機化された栄養塩・重金属の吸着材を用いた選択的分離と、残存する汚泥や液分の有効利用に向けたプロセスの研究開発を行っています。
(環境省 地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業、代表機関: 三井住友建設)
内容:
日本では現在、約1.8億羽の採卵鶏が集約的に飼養され、年間約800万tの鶏ふんが局所的に排出されています。これらは土地利用の制約のため、温室効果ガスを放出しつつ電力を消費し、高速堆肥化装置で処理されています。完全閉鎖型で創エネルギー可能なメタン発酵処理は環境負荷低減が期待できる反面、毒性が高いアンモニアの生成や飼料由来の無機砂による配管閉塞が実用化への課題となっています。本事業では、前処理槽(加水分解・ストリッピング)の導入によるアンモニア除去システムの確立と処理プロセス・装置設計の改良によって、新規カーボンニュートラルシステムを構築し、国内初の採卵鶏ふんを単一原料としたバイオガス化によるエネルギー回収技術の実用化を目指しています。本研究室では、本提案プロセスのラボスケールでの基礎データの収集と実機運転へのフィードバックを担当しています。
詳細についてはこちらを御覧ください。
〈日本私立学校振興・共済事業団 学術研究振興資金〉
内容:
化粧品・健康食品・色素・バイオ燃料などを生産できる微細藻類は数10万種が存在しますが、大量培養できる増殖性を有する種は30種(株)程度に限られています。難培養な微細藻類種の中には高濃度の有価物を含有するものも存在しており、大量培養に最適な培地が開発されることで産業化への突破口となります。自然界では、降雨によって土壌浸出水が沿岸域に流れると、赤潮(微細藻類の大増殖)が誘発されることが経験的に知られています。土壌抽出液に含まれる溶存有機物は、微細藻類の増殖に深く関与し、土壌抽出液の添加は、微細藻類の増殖促進に極めて高い可能性を秘めています。本研究では、土壌抽出液の添加による新規の微細藻類培地を研究開発し、これまで難培養とされてきた各種の微細藻類の増殖と有価物生産性の向上を目指しています。